「会社員になって企業型DCに加入したけど、iDeCoも使うべき?」「両方やったほうが得なのか、片方でいいのか…」

会社員として働き始めると、老後資金の制度選びでこんな悩みにぶつかります。書籍やYouTubeを見ても「両方使うべき」「いやマッチング拠出だけで十分」など意見が分かれていて、結局どうすればいいのか分からない——という方も多いのではないでしょうか。

実は、この問題は2026年4月の制度改正で大きく状況が変わりました。マッチング拠出のルールが緩和され、会社員にとっての選択肢が一気に広がっています。

この記事では、

  • iDeCoと企業型DC、そもそも何が違うのか
  • 2026年4月の改正で何が変わったのか
  • 会社員が選ぶときの5つの判断軸
  • マッチング拠出を月8,000円で使っている私のリアルな判断

を、20〜30代の会社員の方向けに正直に解説します。先に結論を言うと、会社にマッチング拠出制度があるなら、私はiDeCoとの併用ではなく「マッチング拠出に集約する」ことをおすすめします

なお筆者(カグヤ)は建設・不動産業界の会社員で、勤務先の企業型DCでマッチング拠出を活用中。FP3級の知識を踏まえつつ、実体験ベースで書いていきます。

iDeCoと企業型DC、そもそも何が違うのか

まず、両制度の違いを整理しましょう。基本的な違いは表の通りです。

項目iDeCo(個人型DC)企業型DC
加入主体個人が自分で申し込む会社が制度として用意
掛金の出し手自分(給与から拠出)会社(マッチング拠出時は本人も)
金融機関自分で選べる会社が決めた金融機関
商品ラインナップ多くから選べる会社が選定したものから選ぶ
口座管理手数料自己負担(月171円〜)会社負担が一般的
加入手続き自分で書類提出入社時に自動加入が多い

ざっくり言えば、「iDeCoは自分で全部選ぶ、企業型DCは会社の枠組みの中で選ぶ」という違いです。

2つの制度の「共通点」も意外と大きい

違いに目が行きがちですが、実は両者の節税メリットや基本ルールはほぼ同じです。

  • 掛金は全額所得控除になる(マッチング拠出含む)
  • 運用益は非課税
  • 原則60歳まで引き出せない
  • 受取時に退職所得控除または公的年金等控除が使える

つまり、節税効果という観点では大きな違いはなく、「誰がお膳立てしてくれるか・どこまで自分で選ぶか」という運営面の違いがメインだと考えておけば、まずは十分です。

マッチング拠出とは?2026年4月の重要改正

ここからが本記事で一番大事な部分です。マッチング拠出を理解しておくと、iDeCoとの比較が一気にクリアになります。

マッチング拠出の基本

マッチング拠出とは、会社が出してくれる「事業主掛金」に上乗せして、自分の給与から「加入者掛金」を出せる制度のことです。

たとえば私の場合、勤務先の企業型DCでは、

  • 事業主掛金(会社負担):月8,040円
  • 加入者掛金(マッチング、自分負担):月8,000円
  • 合計:月16,040円

を毎月積み立てています。自分で出した8,000円は全額所得控除になるため、実質的にはiDeCoと同じ節税効果が得られます。

2026年4月の改正で何が変わったのか

これまでマッチング拠出には、「加入者掛金は事業主掛金以下でなければならない」というルールがありました。会社が月5,000円しか出してくれない人は、自分も5,000円までしか出せない——これでは節税効果が限定的でした。

しかし、2026年4月施行の改正でこの制限が完全に撤廃されました。

項目改正前改正後(2026年4月〜)
加入者掛金の上限事業主掛金以下拠出限度額の範囲内なら自由
拠出限度額の合計月55,000円(企業年金等との合算)同じ(2026年12月から月62,000円に拡大予定)

つまり、会社が月5,000円しか出してくれなくても、自分で月50,000円を上乗せして所得控除を受けることが可能になったのです。これは会社員の老後資金作りにおいて、大きなインパクトのある改正です。

マッチング拠出とiDeCoは併用できない

ここで重要なルールがひとつ。マッチング拠出を使っている人は、iDeCoには加入できません(このルールは2026年4月以降も継続)。

つまり、マッチング拠出制度がある会社の社員は、

  • マッチング拠出を使う
  • iDeCoを使う

どちらか一方を選ぶ必要があります。これが「会社員の老後資金制度選び」で最も重要な分岐点です。

出典:トウシル「4月から企業型DCのマッチング拠出『上限撤廃』、iDeCoから乗り換えるのが得?」(楽天証券) / マネクリ「【企業型DC】2026年4月から会社掛金を超えて、マッチング拠出が可能に」(マネックス証券)

iDeCo vs 企業型DC(マッチング拠出):会社員の5つの判断軸

ここからは、マッチング拠出制度がある会社員が「どちらを選ぶか」を決めるための5つの判断軸を見ていきます。

①手続きのラクさ → マッチング拠出が圧倒的に有利

マッチング拠出は給与天引きで自動的に拠出され、年末調整も会社が処理してくれます。一方iDeCoは、自分で書類を提出して申込み、毎年の年末調整時に控除証明書の手続きが必要です。

「投資は仕組み化が9割」と言われますが、マッチング拠出は最初に設定するだけで、その後は何もしなくていい仕組みが完成します。

②手数料の安さ → マッチング拠出が有利

企業型DCの口座管理手数料は、多くの場合会社が負担してくれます。一方iDeCoは加入者本人が負担する仕組みで、最低でも月171円(年間約2,000円)、金融機関によってはもう少し高い手数料がかかります。

長期で30年運用するなら、ここだけで6万円以上の差になる計算です。

③商品選択の自由度 → iDeCoが有利

iDeCoは金融機関も商品も自由に選べるため、業界最低水準の信託報酬のインデックスファンドを選びたい人にはメリットがあります。

一方、企業型DCの商品ラインナップは会社が用意したもの限定。会社の選定次第で「いい商品が揃っている」場合と「微妙な商品しかない」場合があります。

④節税効果 → 改正後はほぼ同等

掛金が全額所得控除になる点はどちらも同じ。同じ金額を拠出するなら、節税効果の差はほぼありません。

2026年4月の改正でマッチング拠出の上限が撤廃されたことで、「節税効果のためにiDeCoを選ぶ」必要性は大きく下がりました

⑤管理のシンプルさ → マッチング拠出が有利

マッチング拠出は企業型DCの中で完結するため、口座が一本にまとまります。受取時の手続きも、転職時の対応も、すべて1つの制度内で済みます。

iDeCoを併用すると口座が2つになり、運用商品のチェック、リバランス、受取手続きが二重に発生します。

【私の選択】マッチング拠出を月8,000円で活用中

ここからは、私自身がどう判断したかを正直に書きます。

私の企業型DCの運用状況

項目金額
事業主掛金(会社負担)月8,040円
加入者掛金(マッチング、自分負担)月8,000円
合計拠出額月16,040円・年192,480円

運用商品については、企業型DCの商品ラインナップから、自分で選んだ低コストのインデックスファンドで運用しています。会社が用意してくれた商品の中から選ぶ形ですが、幸いにも全世界株式やS&P500に連動するファンドが含まれていたため、新NISAでの運用方針と揃えることができました。

関連記事:eMAXIS Slim 全世界株式 vs S&P500|オルカンを選んだ理由と両方アリの判断軸

マッチング拠出を選んだ理由

シンプルに以下の3点です。

  • 給与天引きで自動化されている → 続ける労力がゼロ
  • 掛金は全額所得控除 → iDeCoと同じ節税効果
  • 会社が口座管理手数料を負担 → 実質的なコストが安い

「会社の制度を最大限活用する」という当たり前の戦略ですが、これがいちばん効率がよいと判断しました。

私がiDeCoを併用しない2つの理由

書籍やYouTubeでは「マッチング拠出とiDeCoは併用できないが、片方を限度まで使ったうえで余裕があればNISAに回せばいい」「企業型DCの上限が低いならiDeCoのほうが得」など、さまざまな意見があります。

ただ、私は2026年4月の改正後の現状において、マッチング拠出制度がある人は、iDeCoとの併用を考える必要はないと考えています。理由は2つです。

理由①:老後資金の目的が同じだから、分散させる意味がない

マッチング拠出もiDeCoも、「60歳以降に受け取る老後資金」という目的は完全に同じです。

「同じ目的のお金を、わざわざ2つの制度に分けて持つ意味があるのか?」——これが私の素朴な疑問でした。投資先の分散(オルカンとS&P500を分けるなど)には意味がありますが、制度の分散にはほとんどメリットを感じないのです。

ちなみに、すでに私は新NISAで「いつでも引き出せるお金(住宅購入・大きな出費・FIRE資金など)」を運用しています。マッチング拠出は老後資金専用、新NISAはそれ以外、という目的別の使い分けができていれば、それで十分だと考えています。

理由②:口座が増えるほど、管理が面倒になる

口座を分けると、

  • 各口座の運用商品をチェックする手間
  • リバランス(資産配分の調整)の手間
  • 受取時の手続きの手間
  • 転職時の手続きの手間

がすべて二重になります。「投資は続けてこそ成果が出る」という大原則を考えると、シンプルな運用設計のほうが長続きします。

私はもともと「家計管理も投資もシンプルにしたい」というタイプなので、口座を増やすこと自体がストレスになります。同じ節税効果が得られるなら、シンプルな方を選びたいのです。

ただし、こんな人にはiDeCoが合う

公平に書いておくと、以下のような方にはiDeCoのほうが合っている可能性があります。

  • 会社にマッチング拠出制度がない
  • 企業型DCの商品ラインナップに不満がある人(信託報酬が高い・選択肢が少ないなど)
  • 企業型DC自体がない会社に勤めている人

特に最後のケースでは、iDeCoは老後資金作りの最有力手段になります。

関連記事:iDeCoの始め方|会社員が知っておきたい仕組みと3つの節税メリット【2026年最新】

ケース別おすすめパターン

ここまでの内容をもとに、状況別の選び方を整理します。

あなたの状況おすすめの選択
会社にマッチング拠出制度あり・商品にも満足マッチング拠出を最大活用(私のケース)
会社にマッチング拠出制度あり・商品に強い不満iDeCoを選ぶ判断もあり
会社の企業型DCはあるがマッチング拠出制度なしiDeCoを併用するのが有力
会社に企業型DC自体がないiDeCo一択

「両方使うべきか」と悩む前に、まず自分の会社の制度を正確に把握することが大切です。マッチング拠出制度があるかどうか、ある場合は事業主掛金がいくらかは、勤務先の総務・人事に確認すれば教えてもらえます。

まとめ:会社員の老後資金作りは「制度の使える順」で

会社員の老後資金作りは、シンプルに考えれば以下の優先順位になります。

  1. 会社の企業型DCを最優先で活用(事業主掛金は実質的に「会社からのお小遣い」)
  2. マッチング拠出制度があれば積極的に上乗せ(給与天引きで楽・全額所得控除)
  3. マッチング拠出がない、または商品に不満があるならiDeCoを検討
  4. それらと並行して新NISAで「老後以外の目的」のお金を運用

「両方やったほうが得」という意見もありますが、同じ目的(老後資金)の制度を二重に持つ必要はない——少なくとも私はそう考えています。シンプルな運用が、長く続けるための最大のコツです。

会社の制度はあなたが入社した時点ですでに用意されている武器です。まずは自分の会社にどんな武器があるか確認するところから始めてみてください

関連記事: iDeCoの始め方|会社員が知っておきたい仕組みと3つの節税メリット【2026年最新】 新NISAの始め方を初心者向けに解説 手取り別「投資に回せる額」の決め方


※本記事は筆者の実体験と公開情報に基づく情報提供を目的としており、特定の金融商品や運用方針を推奨するものではありません。制度の詳細や拠出限度額は記事執筆時点の情報です。最新情報は厚生労働省・iDeCo公式サイト・勤務先の年金規約等の公的情報源をご確認ください。投資の判断はご自身のリスク許容度を踏まえて行ってください。